STORY
チョコレートをカルチャーに。
明治がmeiji THE Chocolateにかけた想いに
デザインで併走する。〈後編〉
リブランディングしたデザインは、担当者の予想をはるかに超える大きな反響に
発売後、商品の反響はどのようなものでしたか?
印象的だったのは、発売して一年くらい経った頃からSNSでバズりだしたことですね。
カカオのシンボルロゴの周りの広い余白を利用して、イラストボードのように使って描かれている写真をSNSで見かけたんです。他にもパッケージを切り抜いてしおりにしたり、スマホケースにリユースしたり、アイドルやアニメキャラの推しカラーのパッケージを集めたり、といった様々な方向へと波及してゆきました。若い世代の方々に楽しんで頂けたのは嬉しい誤算でしたね。
「スーパーやコンビニに並んでいるだけで話題になるようなブランドにする」という目的は、ある意味達せられたのですね。
そうですね。その他、催事用のデザインも数多く制作しました。2017年には東京、パリの2拠点で〈サロンデュショコラ〉に出展。東京で行われた同催事では、2017年から2022年まで出展した明治ブースでの〈ザ・チョコ〉商品パッケージやリーフレットを制作させて頂きました。
そして、同デザインは日本パッケージデザイン大賞では金賞を、他経済産業大臣賞など多数の賞レースで受賞しました。
ムーブメント後のデザインリニューアル
リブランディングでさまざまな反響があった後、〈3代目〉のデザインリニューアルがありました。このリニューアルの狙いはどんなことだったのですか?
〈3代目〉では「産地別の香味」にフォーカスしたコンセプトでリニューアルをしました。コーヒー豆のような整理の仕方に近いですね。
バリエーションは四種類なのですが、これらはすべてカカオの産地が異なります。ナッティな香りのベネズエラ、フルーティな香りのブラジル、フローラルな香りのペルー、スパイシーな香りのドミニカ共和国、というラインナップです。産地によって異なる香味をうたうため、産地の特徴をデザインで前面に押し出しています。
〈2代目〉はかなりソリッドな印象でしたが、クラフト地も変わりあたたかみも感じられるような印象を持ちました。
ベースのクラフト地が変わったことで印象が変わって見えますよね。産地を表現するにあたり南米の風土を感じさせるべく、質感は粗め・濃い色合いの素材感たっぷりのベース地に変更したんです。
カカオ豆のグラフィックもカラフルになっていますね。
産地の違いは〈国〉の違いによるもの、産地=国のイメージと捉え、産地国の国旗もイメージの参考にしました。国旗の使用色を組み合わせて抽象的にパターン化し、さらにブラジルなら“トゥッカーノ”という鳥、など産地に由来するモチーフと最終的に組み合わせたデザイン表現としました。
〈ザ・チョコ〉の再定義と、そのデザインの進化
そして2022年秋リニューアルの〈4代目〉は、包装形態から大きく変わっていますね。
包装形態の変更は、チョコレートがひとくちサイズに変わったことに由来します。より香味を感じられる商品設計になったんです。
〈4代目〉パッケージからサステナブルな印象が見受けられます。
明治は長期に渡りカカオ豆が収穫される農園のサポートに取り組んできました。例えば、農園への井戸の寄贈、苗木の配布、営農指導などです。このカカオ農家支援を通じて〈ザ・チョコ〉も〈初代〉から製造していたのですが、〈初代〉~〈3代目〉と比べより香味を感じる設計でリニューアルしたのが〈4代目〉の〈ザ・チョコ〉です。コンセプトも「FARM TO BAR」として再定義されました。
サステナブル・エシカル(※)といったキーワードは〈4代目〉オリエン当初から出ていましたし、生まれ変わった印象にしたい、カカオの本質を表したいのでカカオのシンボルロゴも変えたい、というお話もありました。
生まれ変わった印象にしたい、というオーダーは2代目リニューアルからの〈ザ・チョコ〉の世界観とのバランスが難しかったのでは?
サステナブルやエシカルといったキーワードは、〈3代目〉期間限定品アソートの「CACAO TRIP」をデザインした際にカカオ農園の情報をインプットしていたので、いま振り返るとその時点からなんとなく意識し始めていました。
「FARM TO BAR」をどう表現すべきか?をデザイナーと打ち合わせを重ねる中で、“カカオを取りまく環境”を表現するのはどうかというアイデアが出てきました。
なぜそのような発想になったのでしょうか?
カカオ農園は単純にその土地というだけでなく、カカオの成長に関与する太陽・風などの自然はもちろん、農園にいる人など…それらを含めて“環境”である。カカオをとりまく環境をストーリー化することが「FARM TO BAR」を体現することになると思ったのです。それを農園で働く人の手やカカオの葉などのモチーフへとつなげ、グラフィックとして仕上げていきました。
カカオのシンボルロゴがリアルなカカオになりましたね。
カカオの本質を表したいという明治のご担当の意向で、シンプルにしつつ本質らしさにつながるタッチで仕上げました。しかしこのカカオのシンボルはブランドの大事な核ですから、シルエットの輪郭はキープしカカオの表現は何度も検証しました。このカカオロゴに先述のカカオをとりまくモチーフを一体化することで「FARM TO BAR」を表現したデザインとなっています。
本当に明治さんと「一緒に走り続けている」感じですね。
初代からデザインしている〈ザ・チョコ〉ですが、何より印象的なのは〈2代目〉の時が特にそうなのですが、明治のご担当者を始め、関わる多くの人たちと一緒に作っている感覚がずっと失われなかったことです。遠大なストーリーと世界観を持つ〈ザ・チョコ〉のリブランディングは、誰一人欠けても実現できなかっただろう案件です。
とはいえ、私たちがやれたことはまだまだあるはず、という思いも変わらずあります。これからも明治のご担当の方々と一緒に、様々な課題に向き合いながら日本のチョコレート文化をより成熟させてゆく、そのお手伝いができればと思っています。