STORY


「PL20周年の感謝」を形に。
20年の節目に、自分たちの次の一歩を見据え、
「PLデザイン」の本質も探究する。
プロデューサー佐藤/デザイナー岩濱・小林・柴田・山崎
「20周年記念」は、全社的な取組みに。
この度、PLが創業20周年を迎えられた節目にあたり、記念品を制作したそうですが。
佐藤:はい。クライアントはもちろんのこと、そのほか当社を支えてくださった皆様あってこそのPLですので、その方々に心からの御礼としてお配りする記念品を社内で企画し、作ってみようという話になりました。感謝の気持ちを形にするべく、1年前からこの記念品のために準備を進めてきました。
山崎:プロデューサー・デザイナー社員総出で取り組みました。途中からAチーム・Bチームに分かれて、それぞれの視点で進めてゆきました。
記念品制作は、デザインシンキングのプロセスで導き、創り出す。
どのようなプロセスで進んでいったのですか?
小林:デザインシンキングを繰り返しながら取り組みました。まずはとにかくキーワードをたくさん出しましたね。例えば「これまでを振り返って今何を感じているか?」「未来についてどう考えているか?」とか。「今のPLにおける改善点」など自分たちが課題として捉えていることも含めてじっくり議論しました。
佐藤:出た意見を元にして、自分たちなりにPLのスローガンも考えました。一例ですが、「プロモーション」や「ライト」という言葉ひとつにもどんな含みを持たせられるか、とか。「PRO(前へ)」「MOTION(進める)」という単語が持つ意味を、自分たちの取るべき行動へと落とし込むなら、「ずっとつながるデザインを。」や「ワクワクを照らそう!」といったスローガンになるのかな、など。スローガンもたくさんの案が出ましたね。
小林:そこからさらに「誰に何を届けたいか?PLとして、どんな仕事や活動をしてゆきたいか?」という議題へと展開し、また様々な意見が出た中で、特に「食×子どもの貧困」「生産者と直接つながるために」「ゴミ問題」といった、社会課題に取り組むアイデアが多く挙がりました。その中で、「食×〇〇〇」をテーマの軸に据えようか、となって。それで、サスティナビリティの観点から古米を活かすというアイデアが生まれました。さらにSWOT分析を経た上で、ターゲットペルソナ(記念品をお渡しする方々)にどんな価値を与えられるかについて何度も話し合って……議論の末、戦略と制作物がまとまりました。
岩濱:PLのみんなが、デザインの力で社会課題を解決しようという視点を強く持っていることが改めてわかった議論だったと思います。
それが「20th記念ポン菓子」というわけですね。
佐藤:そうです。最初は「プロモーションズライト」に掛けて「プロモーションズライス」というネーミングにしていました。世の中的に新米より敬遠されてしまう古米の課題をPLがおいしく解決!というコンセプトでした。
ポン菓子の“デザイン”に込めた想い。
そうして最終的に落とし込まれたデザインが「心を※(こめ)て」。とてもユニークですね。
山崎:そこに至るまでにも様々な議論がありました。Bチームの案が採用され、プロダクト名は「プロモーションズライス」に一度決まったのですが、進めるうちにこれで『当社を支えてくださった皆様への感謝の気持ち』が伝わるだろうか?という根本的な意見が出てきたんです。
小林:私も山崎さんもBチームでしたが、たくさんのことを話し合ううちにあれも言いたい、これも言いたいとなってしまったんです。
岩濱:煮詰まっていたんですよね。「プロモーションズライス」では伝わらない、感謝の気持ちは別のデザイン要素を入れて検証を重ねましたが、まだ伝わりづらく……メッセージが複雑になっていました。
「心を※(こめ)て」のデザインは柴田さんが手掛けられたんですよね。今伺った流れをベースにデザインを考えられたんですか?
柴田:いえいえ、僕はAチームだったので、ポン菓子に至る経緯についてあまり知らなかったんですよね(笑)。ただ、デザインに着手する際に「何のためにお渡しするのか?」という基本に立ち返ると、20周年の感謝、つまりこれまでお付き合いのあった方々のおかげでPLが成り立っている、という気持ちですね。これを第一に伝えるべきだと考えました。あとはダジャレですね。「心を※て」という、米という言葉へのリンク。その結びつきには、メンバーの全員がスッと腑に落ちたみたいで。
つまりBチームから出されたポン菓子という案に対し、柴田さんが出されたデザインで方向性が定まったという感じですか?
柴田:そうなりましたね。
小林:「心を※て」というキーワードを柴田さんがポンと出してくれたことは大きかったです。PLが今までやってきた経緯を全部包括しているにもかかわらず、とても軽やかで。納得感もありました。
グラフィックデザインそのものにも大変遊び心がありますよね。
柴田:「心」という漢字と「米」という漢字、交差するナナメ棒一本で切り替わるという、見た目上のギミックも上手くいきました。あと、「こめ」一つとっても漢字や平仮名がありますが、我々は仕事上、注釈として※(こめじるし)を使うことが多いので。一般の人たちよりもこの記号に接点があるんです。じゃあそれをうまく使えないかなとは思っていました。例えば、注釈だらけのパッケージにしちゃうとか。そんな会話もメンバーと交わした記憶が残っていて。なら、「心を込めて」の「こめ」を※にしようという、自然な流れでデザインが生まれました。さらに付け加えると、「心を込めて」というメッセージの中にある普遍性も大事な要素だと思っています。非常に余白のある言葉なので、手にされた方々の思考の中で意味がそれぞれ自由に広がると思いました。
山崎:「プロモーションズライス」という言葉は決定!というムードの中でも違う解答を柴田さんが出してきたというところがとてもPLらしいと思います。予想していなかったルートで正解にたどりつく…というか。
岩濱:そうですね、課題の先にある本質に向き合っているからこそ出た、とても良い案だと思いますね。


制作過程で再発見した「PLデザイン」
紆余曲折や思考錯誤があり、1年という長い時間をかけられたんですね。
佐藤:そうですね、1年のあいだ20周年についてデザインシンキングを繰り返し、ぐるぐる色々なことを考えたんですが……そもそも20年も会社が続いていること自体が素晴らしいと思うんです。それは我々がただただがんばったというよりも、支えてくれた方々がいてくださったからで、本当に感謝しかないですね。そのシンプルな想いを、言葉ではなくモノだけでコミュニケーションを取ってゆくのなら、伝え方はシンプルじゃないと。情報が山のようにある昨今では伝わりづらいですよね。
岩濱:また、PLは社風として実直さ・真面目さみたいなところもあると感じているので、その雰囲気にもこのデザインはマッチしていると思います。
柴田:確かに真面目だと思いますね。おとなしいというか。でも反面、自分のデザインに対しては情熱的だと思います。デザイナーは個々のデザインの価値観みたいなものが自分の提案に乗ることもありますが、とても個性豊かです。時としてそれが溢れ出てしまう。抑えきれない。それがゆえにクライアントを驚かせてしまったり、ということもあります。
この企画を推し進める上で発見も色々とあったようですね。
佐藤:メンバーみんなの興味の広さです。こういうことをやりたい、ああゆうことをやりたい、と思いがとどまらないんです。自分達の日常生活でふと疑問に思ったこととか、これはデザインで解決できる社会問題なんじゃないか、とか……思いつきを含めた小さなアイデアも入れたら100個くらい出たんじゃないでしょうか(笑)。みんな「デザイン」好きだなーと思いました。
小林:確かに(笑)。今回の件で、この人はこういうこと考えていたんだ、みたいな一面も知れたのは面白かったですね。皆さんの人生が垣間見えました。
山崎:興味の持ち方も、「これは構造に問題があるんじゃない?」という問いかけから、「アウトプットがもっと○○だったらより伝わるのでは?」という具体的なものまで、単に好き/嫌いとか、そんなレベルの話ではありませんでしたね。そういったメンバーが持つピュアな思いを引き出すセッションのようなことがデザインシンキングでは行われていたように思います。
柴田:音楽で例えるなら、ジャズっぽいかな?様々な楽器のプロが、曲の最初と最後は全員合わせるんだけど、間奏部分は各自即興で自由にソロを弾くんです。「ぼくはこう感じたけど君はどう感じた?」といったふうに、個々がこれまで練り上げてきたものがプレゼンのシーンで出てきているような感じなんです。で、時には化学変化を起こします。そうして、PLという名のバンドのような一塊になってクライアントに提示される。そんなふうに思っています。
山崎:自由に表現できる文化があるからこそ、一人ひとりの生き様みたいなものがデザインに表れるんです。そしてデザイナー同士でも「やられた!」と思う瞬間もあり、また互いにリスペクトもし合っている。「やるぞ!」みたいな声を上げるタイプではないのですが、みんな心の奥底でデザインにとても熱い気持ちを持っています。そんな人たちが集まっている環境はシンプルに心地良く、また刺激的です。そんな環境こそが、PLの育んできた文化そのものだと思いますね。
佐藤:そしてデザイナーほかスタッフ全員を一番先頭に立って引っ張っていくのがプロデューサーです。また音楽の例えになりますが、デザイナーの柴田さんはジャズで表現していましたが、プロデューサー側から見るとオーケストラが近いかもしれません。1つの曲があって、自由にデザイナーが解釈した音を最後は指揮者として1つにまとめていくというか。この音でお客さまに感動を届けられるのかな?この解釈もいいけどもっと違うアプローチにした方がより深く届けられるのではないかな?と、常に目を光らせています(笑)
小林:デザイナーの思考や感性をうまくコントロールしてくれているというか、思いっきり自由にデザインさせながらも、その自由が単なる自己表現で終わらないよう導いてくれるんですよね。そのバランスを取ることで、デザインの精度が一段と上がるんだと思います。
進化し続ける価値をこれからも創出していくために。
PLとして変化を遂げながら、今後も大事にし続けたいこと。
生成AIが進化し、簡単にデザインができる時代が迫りつつある中、PLのデザインはどのような価値を持つと考えますか?
柴田:AIとの違いは、「プロセス」にあると思います。ものごとが事実や結果に結びつくまでのプロセスで感情移入が育まれ、やがて感動につながってゆくのだと僕は考えています。そこへ導くにはセンスに加えロジックも不可欠ですが、PLのデザインは、多種多様なメンバーが持つセンスとロジックが不規則的に掛け合わされることで、感情に届くモノやコトを生み出せているのかもしれません。とてもありがたいことにクライアントの皆様はこのプロセスを重んじてくださっているように感じます。PLのメンバーは本当にしつこいくらい仮説を立てるんですよ。そして仮説を練り続けて、あげくオリエンシート自体を疑うこともあります。そこに書かれていない解答があるかもしれないからです。そういったプロセスをみんなが大事にしていますし、大事だと思う方々とこれからも仕事がしたいなと思います。
小林:そうですね、私もAIはあくまでもツールだと思っています。AIで手軽に・短時間でつくられたものが増えていくほど、逆にPLの価値は相対的に上がると思っています。人間が作るから唯一無二のものが生まれる。人によってここまで考え抜かれたデザインがいいよね、っていう揺り戻しは必ずあると思うんです。
岩濱:僕も同じような考えです。デジタルツールを使ってはいますが、デザインって元来アナログな手仕事なので、商品を実際に見ずに買うのではなく、やっぱり店頭で手に取ってほしいし、実際に人の手に渡った時に真価を発揮するものだと思うんです。PLのデザインはパッケージでいうと裏面や側面にもすごく細かなこだわりがあって、それは手に取らないとわからないんですよ。そういう遊び心や、デザイナーの秘めたる情熱がPLの価値として伝わってほしい、と思っていますね。
それではこれから先、21年目以降PLはどのように歩んでゆきますか?
山崎:今の3人の言葉には、クライアントの皆様へのリスペクトが多大に込められているように感じます。要望を叶えるためにデザインの知識や経験や感覚で精一杯応えたい。その一心です。
佐藤:最後は人と人のおつきあいだな、と常に思っていて。クライアントの皆様とも本当に核となる部分でも関わって共鳴しあえると、もっと新しいものや、お互いが心から納得できるものができるだろうし、そういう関係を築いていけるよう、これからもPLメンバー全員で取り組んでいこうと思っています!




愛媛県では結婚式の引き出物など、縁起物として重宝されるポン菓子。道後で地元の素材を使ってポン菓子づくりをされているinaho(稲穂)さんにご協力頂きました。古米からポン菓子を作る場合もありますが、inahoさんが追求している美味しさの再現性が難しいと判明したため、2024年度産、石川県能登地方の能登こしひかり(のと米)でつくることに。周年記念の「お祝い」と20年間の「熟成」。『お祝い×熟成』をキーワードに開発した、PLオリジナルの3つのフレーバーが完成しました。
<熟トマト&チーズ> 完熟トマトをベースに国産プロセスチーズを混ぜ込み、ピンクペッパーがアクセントになった大人味。<さくら&練乳> 桜のドライフラワー入り。生クリームから作った練乳でコクを出しました。ピンクは天然のビーツで色づけ。<熟醤油&バター> 大麦醤油と北海道産バターの濃厚な味わい。生クリームも合わさり、キャラメルのような甘さも感じる一品。