STORY

ねじでできた二重螺旋構造は「つなぐ、をつなげてゆく」という企業DNAをあらわした株式会社リネックスのコーポレートビジュアル。

STORY 02

企業戦略を内外に伝える
コミュニケーションデザイン。
ともに未来を見据え、つなげていく。〈後編〉

06.50周年記念企画、始動

そののち三瓶さんは正式にリネックスに入社され、経営者になられましたね。当時のことをお聞かせ下さい。

三瓶:入社して数年後、亡くなった父に代わって私が社長になりました。そこから忙しさの中で15年があっという間に流れて、私は会長に就任したんです。リネックスが創業50周年を迎える数年前ですね。会社のレベルを一つ上げなきゃな、と感じました。中小企業としては100億というのは一つの目標でもあったんです。でも扱っている商品はねじ、ひとつ何十円の世界なんですよね。それを売って年間100億の売り上げを作るというのは、ただただモノを右から左に流すだけではダメで。いかに付加価値をつけるかという話になってくるわけです。

松永:つまりインナーではなく、外に対して会社をどんどんアピールしていかなきゃならない、と。

三瓶:その通りです。で、会社のことは新社長に任せて、これからは一歩先を見てゆくような立場になり、会社にフィードバックしてゆこうと。それを50周年のタイミングにぶつけたい、といったことを4~5年前から松永さんとずっと話していたんです。

松永:その頃、またひんぱんに会いだしたんですよね。今でも覚えているんだけど、京都の鴨川沿いの店。たまたま二人とも関西に行く用事があったんですよね。

三瓶:そうそう。京都の古い川床の料理屋でね。ワイン飲みながら料理食べながら、こういう話をしたんですよ。するとね、松永さんがコースターにボールペンでデザインを描くわけですよ、ササッと(笑)。カッコいいよね。大事なことって、机の上じゃ決まらないんだよね。

松永:(笑)。

創業50周年の新聞広告。「つなぐ、をつなげてゆく」というキャッチコピーが強く主張する。

07.リネックスの機能・ポジショニングをコピーで一括表現

三瓶:そういった流れで「50周年のことを全部お任せできないだろうか?」と正式にお願いしたんです。いま「WE LINK NEXT X」という言葉で、インナーを中心に社名変更をなぜしたか、などもすべて説明して。社内外に、もっとわかりやすい言葉で伝えてゆきたいと。大事なのは、サプライチェーンにおける会社のポジショニングを、どうわかりやすく伝えるか。

松永:リンクというコンセプトも元々ポジショニングから来ているコンセプトですからね。

三瓶:要はうちの会社って「つなぐをつなぐ」会社なんだよね、と。これをどうわかりやすく伝えるかについて悩んでいるんだ、という話をしたんですよ。「つなぐ」というのは、通信会社が良く使っていた言い回しなんだよね。でも彼らの場合は機能面での話だから。リネックスの場合は、業界におけるポジショニングの意味も含まれているわけですからね。

松永:それで、コピーライターの石川と、アートディレクターの堀尾を交えて検討をしたんですよ。

三瓶:求めているものはソフトウェアの時と同じですよ、「WE LINK NEXT X」みたいな固いもの、固い世界観をPLの力を借りてやわらかくしたいんだ、と伝えました。

松永:「つなぐをつなぐ」というのは、もうギリギリまで文言を削っちゃっているわけですよ。これ以上削りようがないシンプルな言葉だから。だから、石川もずいぶん迷ったと思うよ。

創業50周年の記念ウイスキー。樽で買い付けたシングルモルトウイスキーに、オリジナルのラベルと箱をデザインした。

三瓶:そんな中で、これを進行形、すなわち「…ing」にしてはどうだろう、という提案を頂いたんですよ。「WE LINK NEXT X」という理念はすで出来上がっているから、これを変にいじるんじゃなくて「つなぐ、をつなげてゆく」という進行形にしてくれたんです。これはすごいことなんですよ。普通は奇をてらって別の言葉を提案して来るはずだから。やっぱり日本語を熟知していて、固いものをいかにやわらかく伝えられるか、ということについても知り尽くしているんだよね。いつもPLには、その肝心な部分で助けられてきたんですよ。

松永:これから先の、未来のリネックスのことを言わなきゃならないから。これしかない! という表現だと思いますけどね。面白いのが、三瓶さんが大好きな秋山晶さんのコピーも「…ing」なんですよね。「つなぐ、をつなげてゆく」を考えた石川というのがまた、秋山晶さんの一番弟子。

三瓶:本当に、不思議な縁を感じますね。

08.企業の価値を発信する、というロゴの役割

50周年を機に、社名のロゴも刷新されましたね。その辺りのお話も伺えますか。

三瓶さん:リネックスという企業ブランドと、これから出してゆく商品ブランドをわけてゆきたいと考えたんです。それを松永さんに相談すると、これから色んな新商品を出して会社の付加価値を高めてゆく必要がある中で、企業ロゴ≒商品ロゴではなく、会社のロゴは「LINEX」だけのシンプルなロゴにしたほうがいいんじゃないか、と提案されたんです。

松永:なら作り直そうよ、と。「つなぐ、をつなげてゆく」というやわらかさに合った、先進的なイメージを持ったロゴに変えよう、という話になりました。

三瓶さん:で、いくつか提案があった中で特に気に入ったのが、現在採用されているこのロゴです。このロゴの文字はフーツラなんだよね。これってファッションブランドのセリーヌと同じフォントなんですよ。これは洗練されているな、と見た瞬間に思ったんですよ。みんなに見せても、これの方が近代的だし、ブランドとしてさらに品位があると。で、今のCIマニュアルも全部松永さんに頼んで、一新したんですよ。

松永:以前のロゴも決して悪くはなかったんですよ。カラーもデザインも、当時としては流行のロゴだったので。業界的には斬新だし、90年代においては先進的なロゴだったんですよね。
ただ今の時代で、さっきおっしゃられたような企業の価値をどれだけ発信できるかということになると、コミュニケーションの伝達を改善する余地があったので、新ロゴを提案させて頂きました。

リネックスの新ロゴデザイン。コミュニケーションの伝達に重点を置いて制作された。

09.会社案内のグラフィックに込められた想い

会社案内パンフレットの制作時にはどんなコミュニケーションがありましたか?

三瓶:今までうちの会社って、必ずコンセプチュアルアート的なデザインを会社案内の表紙としてやってきているわけですよ。そこで、なにか「つなぐ」をアートっぽく、新たなグラフィック表現でできないか? という相談を松永さんに持ちかけました。

松永:いろんな案を出した中に、このDNA螺旋の案もあったんですよね※冒頭で紹介。

三瓶:これも素晴らしいですね。会社というDNAは社員の中に存在しなきゃいけないし、人が移り変わっても理念はDNAとして残ってゆかないといけないから。
そういうインナーに対しての想いと、もうひとつは我々が社会に対して、どの時代においてもリネックスが考えている商品やサービスが社会の中に残ってゆかなければならない、というメッセージです。ですから、やはり「つなぐ、をつなげてゆく」を見事に表現しているわけですよ。

10.企業ロゴと真逆の色使い、「TRIBO」のグラフィックデザイン

「TRIBO(トリボ)」という新しいネジの販促関連制作物について、お話をお聞かせいただけますか。

三瓶さん:実はネーミングそのものは私が考えました。TRIBOは、例えばEVのような次時代の車に対しての提案にもなる製品です。振動がありながらも緩まず、かつ新しい素材で作るということで、やっぱり車やレーシング、といったイメージを訴求できるビジュアルがいいなと思ったんですよね。これはリネックスの若手社員の意見で、ボルトよりももっと先へ行って、ボルトのデザインだと思わせないようなものにしたいと。

松永:自動車業界の人が見た時に親近感を持つようなデザインにしたかったんですよ。

三瓶さん:そこまでPLは計算してくれていました。うちの会社で赤って真逆のイメージなんですよ。企業ロゴは青だし。精密性とか、技術をイメージさせるとなると、暖色系じゃないはずなんです。そこにあえて赤を持ってきたのは、自動車会社のキーカラーはほぼ赤だから、という視点があったんですよね。
企業ロゴ≒商品ロゴ、ということもしっかり理解してくれています。良い仕事ですよ。

松永:「三位一体。」というキャッチコピーなんですが、これも石川の仕事です。彼はね、ありきたりの言葉なんだけど、一番マッチするものを見つけて持ってくる。その能力が高いんですよ。

あえてコーポレートカラーの逆を使い、インパクトと情報のスムーズな伝達を狙ったデザイン。

11.未来を見据える二人

ありがとうございます。では最後に、「…ing」など、未来をイメージさせる言葉が社内に浸透している手ごたえはありますか?

三瓶:大いにあります。でも、会社には今後もっと色々な人が集まってくるから。ジェンダーの問題や人種差も含めて多様性を認め合い、それぞれの強みを引き出して、もっとクリエイティブに仕事をしてゆかないといけないわけだから、一つの組織の中での一つの理念・DNAを大切にする必要があると思います。そして、それを色んな人が基本を理解しつつ、未来へつなげてゆくということが大事なんだと思います。

松永:確かにそれも「つなぐ、をつなげてゆく」という考えに紐づきますね。

三瓶:そうですね。PLに頂いた言葉は、これからより一層未来への橋渡しとして重要になってゆくだろうな、と感じています。

speaker
松永忠浩 Tadahiro Matsunaga
プロモーションズライト代表取締役社長
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